会長挨拶

秋岡 親司
京都府立医科大学 小児科学教室

 この度、日本脊椎関節炎学会第30回学術集会を、令和2年(2020年)9月26日土曜日に、開催させて頂くこととなりました。前身の日本AS研究会を故七川歡次先生が平成元年に立ち上げられてから、第30回目となる学術集会です。内科医、整形外科医および放射線科医以外の領域の者が学術集会長を担当することも初めてです。私がおります京都には元来、“新しもの好き” の気質があり、明治維新後の近代日本において、琵琶湖疏水・インクラインは国内最初で世界でも2番目の営業用水力発電、市電は日本最初の営業用電気鉄道であり、最近も、食の西欧化の象徴であるパンとコーヒーの国内消費1位は京都府との調査結果が公表されています。本学術集会では、この様な気風を多少なりとも反映させ、「全年齢の脊椎関節炎を全身から考える」をテーマに開催させて頂きます。

 脊椎関節炎は、骨の増殖性および破壊性変化を基礎とする炎症性関節炎のパターンであり、様々な疾患により構成されるグループの総称です。発症時期は、若年成人期にピークがありますが、幼少期から老年期と全年齢にわたります。一方、診断のみならず治療・管理において年代毎に異なる課題があり、それらを意識した医療が必要です。また、脊椎関節炎は、関節領域のみではない全身性の疾患です。多診療科、多職種、あるいは地域や産学、医工に及ぶ連携が必須であり、診療や研究に携わる者にはそれらの理解が大切です。今回の学術集会ではこれらを縦断的にそして横断的に考え、学ぶ場として、エキスパートのみならず、この領域に関心をもって日の浅い方々、これから新たに関わっていこうとする方々にもご理解頂ける内容で構成しています。残念ながらCOVID-19の影響で、皆が一同に会することは感染対策の点からできません。その代わり、web会議システムを用いつつも双方向性の議論が主体の新しい学術集会の形を構築し、当該分野の発展に寄与していきたいと考えています。

 脊椎関節炎の名は、診療ガイドライン・手引き等の整備により知られる様になり、ASAS基準を用いた診療が広く行われています。しかし、その多くは欧米において得られた知識を流用したものであり、本邦の実態に真に適しているか否かはわかりません。問題点を探り、課題を的確に捉え、適切な脊椎関節炎診療を確立するためには、私たち自身が研究的にアプローチする以外、方法はありません。自ら考え、自ら起つとの気概をもつことが必要であり、これらを学会本来の使命と考え、その発露の場として第30回の学術集会を執り行わせて頂きます。皆様のご参加を宜しくお願い申し上げます。